じゃんけん戦争


『詩集ノボノボ』より

じゃんけん戦争

 人間はとっても野蛮になる

 子どもから 大人になると


 思い出してみた

 子ども時代の勝負ごと

 勝ち負けって

 どんなふうにして決めたっけ


 じゃんけんで決めたよな

 殺し合いなんかしなかった

 あたりまえだって?

 なら 大人の世界は

 あたりまえじゃないんだな

 
 じゃんけんで決めるって

 とってもいいしくみ

 誰でも対等 

 勝つも 負けるも 

 再挑戦のチャンスもあるし


 ところがだ!

 大人になると とたんに変てこりん

 平和のために殺し合いを

 正義のために殺し合いを

 どっちも 同じことを叫んでる


 命をかけろ

 お国のために 愛する者のために

 戦場に征かない年寄りが絶叫だ

 血気盛んな若者たちは

 サッカー選手のようなヒーロー気分

 スポーツとぜんぜん違うのに


 いっそじゃんけんで決めればいい

 どうしても決める必要が

 もしあるならば

 それは戦争とまったく同じ

 勝ち負け 五分と五分


 五年ごとにやりなおせるなら

 みんな納得するだろう

 子どものじゃんけん遊びのように

 
 行ったこともない小島をめぐって

 一度も見たことのない人と殺し合い

 勝ち負けは 必ず五分と五分

 
 若者たちの戦死という

 野蛮な生け贄は

 もう必要ないはずだ 本当は


 おかしいことを おかしいと

 思えなくなってしまったのは

 いったい

 いつからだろう

 どうしてだろう

 ずっと このままだろうか