二足のわらじ


(孫と一緒に草履編み)

『詩集ノボノボ』より

二足のわらじ

 ひとつだけじゃ大変だ

 服もそうだが  わらじだって

 履き続ければすりきれる


 ところが 社会の向きはその反対

 「しごとでは わらじは

 一足だけしかはけません」


 だから いつも我慢して

 はいている 一足のわらじだけ

 とことん すり切れるまで

 ネクタイしめてる人は 特にみな

 もしかして 忠誠の証でしょうか

 サラリーマンの


 視点を変えて眺めてみれば

 これって かなり哀れです

 足には わらじ一足で

 首には ひき縄に似たネクタイ

 これじゃ なんか飼われているようだ

 未来を質入れしたようだ

 「人間」じゃないしろものに


 かくいう私もそうだった

 つい最近までおんなじふう

 あまり変だと 思ってこなかった


 実はおととい

 こんな話を聞いたので

 こんなもんを書いている


 五十を過ぎて起業する人が

 友人のデザイン事務所にやってきた

 そのまた友人に紹介されて

 あれこれ販促策の相談に


 偶然いあわせたこの私

 聞くともなく 聞いていた

 実はこの方 お堅いお役所仕事の

 ベテラン職員さんでした


 職歴多彩の私でさえも

 あっとおどろく 起業の業種!

 これは普通じゃありません

 興味しんしん 耳を澄ませました


 熟年ベンチャー志望の彼

 (いや「ベンチャーズ」のほうが合うな)

 実は お役所仕事しながら

 はき続けていたんです

 もう一足のわらじ

 夜とか 休日とかに

 職場に内緒で パルチザンしごと


 その経験あって いよいよ起業!

 よくぞ抵抗しました 長い年月

 よくぞ継続しました 自分探し

 おのれを 家畜にせぬために


 こんな人たちも いるんだな

 人知れずひっそりと

 もっともっと 増えればいいな

 
 そして なくなればいいな この言葉

 「サラリーマン」

 新たな名前に 変わればいいな

 「デザイナー」に


 え、私のしごとはデザインじゃないって?

 それは とんでもない誤解です

 どんな仕事も行動も

 人生というキャンバスに 

 あなただけしか描けない

 おのれのための デザインです