孫と老父と日本刀

『詩集ノボノボ』より

孫と老父と日本刀

 毎週木曜の午後3時から 私は孫守り当番である

 娘に頼まれていた用事があったので

 孫娘と一緒に えらく久しぶりに 

 二階の子供部屋へ入る

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 小5の孫ユウキと小2の孫娘ナオ

 まだまだ幼い二人なので

 今のところ 部屋の間仕切りは外されている

 ナオの部屋は 何から何までピンク色

 床続きのユウキの部屋は好対照

 五月の節句からそのまんま

 武者兜と短刀が でんと鎮座し

 野郎っ子くささを出している

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 男の遺伝子ゆえなのか 

 私は思わず短刀を抜いてみた

 と、思ったが抜けない刀だった

 子供用の飾り物だもの 当たり前だよな〜

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 ナオがすぐに寄ってきて 私に言う

 「じいちゃん ユウキね 本物の刀ほしいんだって

 それでね ユウキがね お母さんに言うの

 小牛田のおじいさんからもらってきてほしいって」

 私は一瞬なんのことかわからなかった

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 しばらくして なんとなくわかった

 戦国武将にえらく凝っている小5のユウキ

 きっとこう思ったのに違いない

 92歳の老父は まるで古武士のようだ

 骨董品だらけのあの家になら

 きっとどこかに本物の刀があるはずと

 私は思わず笑ってしまった

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 母親はびっくりして

 「何言ってるの、そんなもの置いたら呪われるよ!」

 と言ってたと、ナオが語る

 たしかに物騒で、戦国武将好きも困ったもんだと私も思う

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 さて時代というのは 人によって縮尺がマチマチのようだ

 ユウキから見ると 江戸時代はついこの前なのかもしれない

 もしかしたら 私は明治時代を知っているかもとか?

 Audibleで「吾輩は猫である」を聴いてたら

 これまたナオが教えてくれる

 「ユウキが授業でそれ習っているよ」

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 私はふと 心の中で苦笑した

 もしかしたら。。。 

 ユウキは私にこう尋ねるのでは

 「じいちゃん、夏目漱石と会ったことある?」

 時代の縮尺が変わるって

 実に新鮮で おもしろいもんだな〜〜〜

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 と、妄想していたら 

 「ただいまー」と ユウキがそろばん塾から帰ってきた

 私の当番時間終了である