ボケはモルヒネ

『詩集ノボノボ』より

ボケはモルヒネ

 最近悟ったことがある

 ボケはきっと モルヒネにちがいない

 水木しげるさんは 最晩年に語っていた

 「ボケも手伝って至福の状態にあります」と

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 さて 日々モルヒネの効き目が強まるわが老父

 家族は看護師のようなもの

 本人の能天気とはうらはらに

 些細なことに 日々翻弄されている

 今日も今日とて郵便局へ

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 雲間に一瞬 日が射すように

 突然 モルヒネが何かを見せるらしい

 ようやく通帳印鑑預かって

 オレオレ詐欺やら 紛失やらの心配を

 なくしたはずと 安心していた郵便貯金

 なんと 知らぬ間に

 印鑑変更 通帳再発行をやらかしていた

 郵便局はすぐ隣

 局員さんも 本人には逆らえない

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 お金や食い物に苦労した世代だから

 きっと 執着が強いのだろう

 所詮老父の金なので

 なくそうがどうしようが あきらめよう

 と思おうとしても やはり割り切れない

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 一晩 悶々としたあげく

 今朝 父に顛末を聞いてみた

 ところが本人は もう何のことやら

 チンプンカンプン

 これ幸いと 父をつれて再々発行手続きをした

 ヤレヤレ。。。

 雲がかかっている間は いいのだけれど

 一瞬の日射しが これからも不安だな〜

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 類は類を呼んでしまうのか

 見ていた録画は「レインマン」

 ダスティン・ホフマンとトム・クルーズに

 老父とわが身が 少し重なった

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 さらに会社では

 大手プロバイダーから 突然お詫びのメール

 法人カードの情報がダダ漏れになりました。

 スミマセンと。

 (それで終わりかい!)

 いやはや。。。

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 ということで 愚痴はいったん終わりだが

 実家の周りは ほんとに長生きばっかしだ

 92歳の老父だが ここじゃまだまだ大関クラス

 96,7歳の現役は このへんにざらにいる

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 先日はたまげたな〜

 郵便局にしゃんしゃんと 歩いてきたばあさん

 私に向かってなつかしそうに

 「あら、ノボちゃん、元気すか?」

 (えっ、そりゃ逆だろう!)

 たしかこのばあさんは 96歳くらい

 たいしたもんだな〜 この世代は。

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 最近はこう思う

 天は 長生きのご褒美に

 モルヒネを与えてくれるんだと

 長生きすればするほど 死ぬのが楽になる

 と何かで読んだが きっとこれだな

 ボケは悲しいことに見えるけど

 本人には天国だ ということに

 今さらながら 気づかせられた

 今日この頃の私です