スローモーション人生へ


(原始的火おこし体験中の孫)

『詩集ノボノボ』より

スローモーション人生へ

 「天の配剤」は たしかにありそうだ

 一見それは 反対に見える

 不調、後退、低下、マイナス。。。

 しかし よくよく考えてみると 

 これらは「よきもの」であるようだ

・・・・・・・・

 身体が固くなりすぎて

 もう機敏な動作は全然できない。

 手指の湿り気はなくなって

 ページをめくるのも大変

 二つの仕事は一緒にできない

 三つ覚えたら一つは必ず忘れてしまう

 お目々は眼鏡を三種類

 生まれつきの不具合も嵩じ

 足腰肩は 日々痛みとの闘い中

・・・・・・・・

 こりゃ大変だ、と思っていたが

 暮らしの速度を落としてみれば
 
 これでも十分いけるじゃないか!

 なんだ、自分の身体に合わせりゃいいんだな

 と、思えてきた今日この頃だ

・・・・・・・・

 作業は必ず一度に一つだけ

 それなら一度に一つの記憶でできる

 だから 同じ場所を何度も行き来する

 これが運動にもなるんだな〜

 仕事の前には準備をぬかりなく

 決してショートカットはしないこと

 細かい仕事は息を止め〜

 のろまそうだが結局早い

・・・・・・・・

 そんな自分を外から見たら

 スローモーション映画のようだろう

 なぜ「天の配剤」かって?

 たぶん 天の声はこんなだろう

 「せわしく動く人生はもう終わり

  ゆっく〜り考えなさい これからは

  だから

  ゆっく〜り動作に切り替えてあげました」

・・・・・・・・

 使い方さえ工夫すりゃ

 古い道具だって役に立つ

 新しいものはもう覚えられないわが父などは

 半世紀以上前の道具がまだ健在だ

 さすがに電化製品は危ないが。。。

 年取れば 身近な道具も

 自分の身体と一心同体なのだろう

 ようやく私も入ったのだ その世界に

・・・・・・・・

 今までの速度こそ 何だったのだろう?

 世の中に合わせ 他人に合わせ
 
 結局 ゆっくり考えることなどできなかった

 でも ゆっくり考えられる今になったら

 別なお悩みが出てきたよ

 ゆっくり考えようと思っても

 いいアイデアが 出てこない

 考える材料を さっぱり貯めてこなかった。。。

 まずは 材料集めから始めなくっちゃ!

・・・・・・・・

 材料探しをしていて ハッと気づいた

 食料、燃料、道具のもとは「自分の里山」にあり

 その里山とやらはどこにある?

 私は発見した

 それは「社会に出る前の自分の人生」にあるのだ

 その頃は「社会人」でも「会社人」でもなく

 「人間」だったから

 これからはその時代を こうよぶことにしよう

 「人生の里山時代」と

・・・・・・・・

 スローモーション人生はたしかに悪くない

 しかし 世にすべてオーライは

 やはりない

 週末は 娘が新年会とやらで孫見を頼まれた

 スローモーション世代の私と妻じゃ

 孫の速度に付いていくのは大変だ!

 オンボロ車で高速道路を走ったように

 もうヘットヘト

・・・・・・・・

 やっと寝かしつけて ヤレヤレ。。。

 ところが真夜中に起きた孫娘

 まだ帰らぬ母親に気づき 大きな声で泣き出す

 あ〜〜、寝不足の翌日よ。。。