俊足風邪小僧


(山城新伍「風小僧」)

『詩集ノボノボ』より

俊足風邪小僧

 孫から風邪をもらうジジババは

 実は多いと噂に聞いた 

 実証実験ではないのだが

 きっとそうだ、と実感した

 孫の風邪菌は元気がいいのだ!

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 どうでもいい連想が また始まった

 「風小僧」

 小学校の頃、日曜朝にあったよな

 山城新伍が 忍者のように

 白黒画面の中で 跳ね回っていたな

 今では元気な「風邪小僧」か

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 木曜日 久しぶりに孫娘の看病へ

 いつもは女房の仕事なんだけど

 午後から外せない用事があるという

 今日は父親が看るのだが

 帰る時間で 看病人の空白ができるらしい

 それじゃ30分くらいなら看てあげよう

 と、行きました。

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 小一のやろっこ孫なら

 同性のせいか 全く心配なくて

 いそいそ行くのだが

 三歳の孫娘だと ちと心配

 なにせ 仕事だけが人生であったこの私

 やくざな仕事世界の 大波小波にゆらゆられ

 顔つきも 実は気性も

 険しくなっていることを

 子供は 敏感に感じ取る

 私と二人っきりになったなら

 きっと めそめそしだすだろうな〜〜

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 ところが 予想は大外れ

 風邪引いてるくせに ニコニコと

 とっても嬉しそうに なついてくるよ!

 「じいちゃん、これ食べて」

 「じいちゃん、お母さんのお顔描いて」

 飼ったばかりの 兄の文鳥を指さして

 「ユウキ(兄)のピッピ、かわいいでしょう」

 ついつい だっこして一緒に遊ぶ私

 一緒にお昼ごはんも食べました

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 やがて父親が帰宅

 「じいちゃん、もう帰っていいから」

 なんて現金なんだろう、子供は

 なんて思って、実は安心する

 「これならすぐに治るだろうな」

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 仕事場に戻ったとたんに

 くしゃみが10連発!

 「変だな〜、ホコリかな?」

 なんて思っていたら

 次の日から のどの腫れ

 そして週末は一歩も外に出られませ〜ん

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 たった30分やそこらなのに

 うつるなんておかしい、と女房は言う

 しかし それは違うということを

 私は知っている

 いや感じている

 子供の風邪菌は俊足なのだ

 「俊足風邪小僧」なのだ

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 子供の「感性」とそっくりで

 子供が人の本性を

 一瞬で感じとるように

 一瞬にして 乗り移ってしまうのだ

 かわいい孫にはまったく無防備の

 私たちのようなジジババに

 まるで風邪菌までが甘えるようにして

 みなさん 気をつけましょう!