へそ曲がり

『詩集ノボノボ』より

へそ曲がり

 へそ曲がりだと思う、自分は。

 なにせ大腸が曲がっている

 毎年健康診断で 大腸内視鏡を差し込んでるが

 名人と言われる先生も 私の蛇腹にはお手上げだ

 盲腸まで行けるのは三回に一回くらいだ

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 何から何まで曲がっているらしい

 数年前、周囲がうるさいので耳にちり紙を詰めた

 そうしたら とれなくなってしまった。。。

 耳鼻科に行ってとってもらったが

 先生があきれて独り言を言う

 「えらく曲がってて、大変だこりゃ」

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 姿勢も曲がっているし

 きっと「つむじ」も曲がっているに違いない

 ところが もう確かめられない

 頭頂部が今や消失寸前で。。。

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 へそ曲がりのオヤジのことを思い出した

 仙台にあった屋台

 三十数年前は仙台に住んでいたので

 たまに寄っていた

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 オヤジの生まれ故郷 九州のある県名を

 屋号にしていた

 「ラーメンひとつ!」と言えば
 
 ムカッとした顔でこう言う

 「そんなのね〜よ、うちは支那そばだ!」

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 「お冷や一つください」と言えば

 ぶっきらぼうにこう言う

 「どんぶり洗う水もね〜のに

  飲ませる水なんか あるわきゃね〜べ」

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 ある日は オヤジが酔っ払って寝ていた

 常連の学生がかわりに「支那そば」をつくっていた

 ネギを屋台の屋根からとって

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 こんな店だが いや、だからこそ

 人気があった

 実は値段もめっぽう高い!

 まさに究極のB級グルメ

 その走りといえなくもない

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 その後仙台は 屋台は一代限り

 新規開店は認めませ〜ん

 っていう悪法ができてしまった

 だから今では ほとんど見かけない

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 ところがだ!

 もしかして?と思ってネットで検索したら

 このへそ曲がりオヤジの屋台は

 まだやっていた!

 食べログとかに「グルメ」扱いでのっていた

 しかも夫婦でやっているようだ

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 でも実物見かけないし。。。

 ネットを詳しく読んでみたら

 「気の向いたときだけしか開店しない」

 なるほど。。。

 へそ曲がりは一生直らないらしい

 きっと私もだな

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 お冷やの代わりに

 最後は蘊蓄はなしでしめます。

 ここで言う「ヘソ」というのは人間の体の中心にある「臍」ではなく、布などを紡ぐときに使う麻糸などを機械にかける前の糸巻きで巻いた状態を指し(簡単に言うと、毛糸玉みたいな状態)、漢字では「綜麻(へそ)」と書きます。つまり「へそ曲がり」も正しくは『綜麻曲がり』なのです。